ゴールデンウィークが終わり、先発隊である酒米「ひとごこち」の田植えが始まりました。私たちのオリジナル清酒「寿一番星」を醸すためのお米です!
そもそも、日本酒を造るためのお米(酒米)と、私たちが普段食べているお米(うるち米)は全く別物。酒米「ひとごこち」は、長野県農事試験場で開発された品種です。

田植えのあとは「植えなおし」。田植え機が回転するため苗がきちんと植わっていない田の四隅や苗の本数が少ない箇所に、手で苗を植え直す作業ですが、これがけっこうな辛さ!重たい泥が脚にまとわりつき、たった数歩進むのも一苦労です。「ちょっとだけやるか〜」と植えなおしを始め、先を見るとおやおや、その先もおやおや、苗が抜けている箇所が次々と目につきます。見てしまったら植えたくなるのが性。途中、泥に尻もちをつくこと1回、結局半日田んぼの中を這い回るハメに……。

今年は新しい機械を導入したこともあり、水もちの良い田にすべく「荒おこし」「代ごせ」といった準備作業に例年より日を割いていました。その間に苗がやや成長しすぎてしまったよう。田植え機が大きめの苗をつまみきれず、空植えの箇所が頻出してしまったのです(泣)
ミレーの名画「落穂拾い」をご存知でしょうか。刈り取りの終わった麦畑で、落ちた穂を拾う婦人たちが描かれた絵です。子どもの頃に山梨県立美術館でこの絵を見た時「どこの国の人も同じようなことをやってるわ」と母が呟くのを聞きました。日が暮れかかった田で、背中をこごめて米のついた稲わらを拾う祖母やおばの姿が頭に浮かびました。「生きるって大変」―――生まれて初めて漠然と不安を感じた小学生の私は、美術館のソファにゴロンと寝転がりました。するとすぐに、案内係の女の人が飛んできて「館内ではそのようなことはおやめください」と。ミレーと聞くと、今でも複雑な気持ちに駆られるのでした。
閑話休題。大型機械による大規模稲作が増えた今、植えなおしなる作業をする人はだいぶ減りました。「一粒でも多く収穫したい」「一粒たりとも無駄にしたくない」―――植えなおしと落穂拾いは、百姓魂の根本を忘れぬための作業として、これからも大切にしていきたいと考えています。

仲間が応援に寄ってくれました。スーツに長靴姿がステキ!差し入れジュースに混じってお酒発見。うわーい♬と思いきや、つい最近亡くなった若いご親戚のお葬式のお酒だそう。

この日の早苗饗(さなぶり・田植えの祝宴のこと)はいつもよりやや静かでした。「私たちもあと何回お米が作れるかな」「元気でいなきゃね」。
早苗饗に 働かぬ人 来ておりぬ 野井文夫